シンガポールの建国記念日集会　雇用法の最新情報

2024年8月18日、シンガポールのローレンス・ウォン首相は、初のナショナルデー集会演説を行いました。「リフレッシュド・シンガポール・ドリーム」を実現するための政策の「リセット」として、主要な施策が発表されました。

演説では、経済、家庭、住宅、教育といった分野の政策に触れる一方で、使用者と労働者に影響する、男性の育児休暇や父母共同の育児休暇の追加といった新たな雇用政策も発表されました。

新たに子を持った親に対するこれらの休暇付与政策の強化は、乳幼児期における親の育児支援を強化しているシンガポール政府の取り組みの一環として、親が子の世話をし絆を深めるための時間をより多く提供しようという観点から実施されるものです。以下、これらの制度についてご説明します。

既存の枠組みと更新案

男性の育児休暇と共同育児休暇

シンガポール政府は、男性の育児休暇の権利を徐々に増加させています。

2024年1月1日、同日以降に生まれた子供の父親に対して政府が付与する育児休暇の期間が、2週間から4週間に倍増されました。そのため、現在、対象となる父親には4週間の育児休暇が付与され、母親には16週間の産前・産後休暇が付与されています。ただし、父親の育児休暇に関しては、上記の4週間のうち、雇用主が付与する義務があるのは2週間であり、対象となる従業員との合意によって、任意でさらに2週間を付与できることとなっています。

これに対し、2025年4月1日からは、男性は4週間の育児休暇を取得する権利を有します。これにより、雇用主は、対象従業員に対し4週間の育児休暇を必ず付与しなければならなくなります。

また、現行制度では、夫は妻の16週間の産前・産後休暇のうち4週間分までを使用することができますが、この政策の限界は、母親の産前・産後休暇の権利が減少してしまうことです。

この点については、新しい共同育児休暇制度によって対処がなされ、新たに子を持った両親に対して、さらに10週間の共同育児休暇が政府により追加付与されることとなっています。

本変更による影響

男性の育児休暇： 前述の通り、2025年4月1日以降、雇用主は対象となる父親に4週間の育児休暇を付与することが義務付けられます。そのため、雇用主は、新たに子を持った父親が育児休暇の取得を申請した場合、これを承諾しなければなりません。

共同育児休暇： 母親の産前・産後休暇の共同使用に代わり、共同育児休暇という新しい制度が導入されます。新しい共同育児休暇制度のもとでは、雇用主は、対象となる従業員に対し、追加で10週間の共同育児休暇を付与する必要があります。この追加の育児休暇は、父母の間で共有され、父親または母親のどちらかがこの権利を使用することができます。育児の必要に応じて、父母の間で均等に分割することも、配分し直すこともできます。

共同育児休暇制度は、雇用主がこの政策の実施に向けて調整・対応する時間を確保するため、段階的に実施される予定です。第一段階として、2025年4月1日に出生した子（または2025年4月1日以降に出産が予定されている子）を持つ従業員を雇用している者は、当該従業員に対し、6週間の共同育児休暇を付与しなければなりません。翌年の2026年4月1日からは、雇用主はこの共同育児休暇の権利を10週間に増やさなければなりません。雇用主は、自社のポリシー及び人員配置をこの制度に合わせて調整する必要があります。

こうした有給休暇の延長の目的は、子供（とくに乳幼児）と過ごす時間を増やしたい親がそうできるようにすることです。従業員は、子供が生まれてから12ヶ月以内に共同育児休暇を取得する必要があります。父母の間で共同育児休暇の割り当てを変更する場合は、子供の出生後4週間以内に申請する必要があり、それ以降の変更は、雇用主と従業員の間で相互に合意することが必要となります。また、従業員は、共同育児休暇を利用する少なくとも4週間前までに通知する必要がありますが、より早いタイミングで雇用主に通知することが奨励されています。

なお、これらの権利はその対象となる従業員のみが利用可能であり、その基準は既存のガイドラインに従うことになります。加えて、政府の付与する共同育児休暇には、現行の上限が引き続き適用され、現在は週2,500シンガポールドル（月額約10,000シンガポールドル）に上限設定されています。

結論

結論として、この新しい政策が2026年に完全施行された場合、親に付与される有給休暇は、合計で約30週間すなわち約7.5カ月となり、現在の約18週間から大きく増えることになります。

こうした政策の実施を成功させるには、雇用主や従業員同士のサポートが不可欠となります。シンガポールにおけるこれらの権利の追加によって、仕事と子育ての両立が前進することが期待されます。